
「スポンサーが決まったけれど、契約書はどうすればいいのか分からない」
スポンサー営業では、決まるまでの話に目が向きがちです。しかし、トラブルの多くは決まったあとに起きます。ロゴはどこまで使っていいのか。大会が中止になったら協賛金はどうなるのか。翌年も続くのか。口約束のままだと、どちらも悪気がないのに話が食い違います。
この記事では、スポーツチームや大会、個人アスリートがスポンサー契約書に入れておきたい基本の10項目を整理します。契約書は相手を疑うためのものではなく、長く付き合うために、最初に約束をそろえておくものです。
スポンサー契約書に入れる基本の10項目
まず全体像です。金額の大小にかかわらず、次の10項目が書かれていれば、後から揉めることはかなり減らせます。
| 項目 | 決めておくこと |
|---|---|
| 1. 当事者と目的 | 誰と誰の契約か、何のための協賛か |
| 2. 契約期間と更新 | 開始日と終了日、更新のしかたと時期 |
| 3. 協賛金と支払い | 金額、消費税の扱い、支払期日、支払い方法 |
| 4. 提供する内容 | ロゴの掲出場所、回数、招待席などの具体的な中身 |
| 5. ロゴ・名称・写真の使用 | お互いに何を、どの範囲で使えるか |
| 6. 競合企業の扱い | 同業他社と同時に協賛を受けてよいか |
| 7. 報告 | いつ、何を報告するか |
| 8. 中止・延期 | 大会や試合が開けないときの協賛金の扱い |
| 9. 途中解約 | どんなときに解約できるか、返金はあるか |
| 10. 信用を損なう行為 | 不祥事のときの対応、反社会的勢力の排除 |
このほか、秘密の扱いや、争いになったときの裁判所(合意管轄)も、契約書の定番の項目です。
特に揉めやすい4つの項目
提供する内容は「数字」で書く
「SNSで紹介します」「会場で掲出します」だけでは、受け取り方に差が出ます。何を、どこに、何回、どの大きさでまで書いておくと、双方が同じものを思い浮かべられます。
- 悪い例:SNSで協賛企業として紹介する
- 良い例:公式Instagramでシーズン中に2回、協賛企業として紹介する投稿を行う
内容が多いときは、料金表やプランの一覧を別紙にして、契約書から「別紙のとおり」と指す形でかまいません。プランの組み方は「スポンサー料金表の作り方」で解説しています。
ロゴと写真は「使ってよい範囲」を決める
スポンサー側は、チームや選手の名前、写真を自社の広告に使いたいと考えることがあります。どこまでよいのかを決めていないと、後で困るのはチームと選手です。
- 使ってよい媒体(ホームページ、SNS、チラシ、テレビCMなど)
- 使ってよい期間(契約終了後は使えるのか、いつまでに取り下げるのか)
- 事前に確認を取るかどうか
- 選手個人の肖像を使うときの扱い(所属先や本人の了承が要る場合がある)
中止・延期のときの協賛金
雨、感染症、会場の都合。スポーツには中止がつきものです。ここを決めていない契約が、いちばん揉めます。考え方は大きく3つあります。
- 返金する:実施できなかった分を、割合で計算して返す
- 振り替える:次の大会や別のメニュー、翌年の協賛に回す
- 返金しない:すでに準備や発信を行っていることを理由に、返金しない
どれが正解ということはありません。大切なのは契約の前に話しておくことです。実施前に中止が決まった場合と、途中で打ち切りになった場合を分けて書いておくと、判断に迷いません。
同業他社を入れてよいか(排他)
たとえば飲料メーカーが協賛しているチームに、別の飲料メーカーが協賛してよいのか。これが「排他」の話です。業種ごとに1社に絞る約束をするなら、その分だけ他社に声をかけられなくなるので、金額にも反映するのが自然です。何も書かないと、後から同業が入ったときに信頼を損ないます。
小さな協賛でも書面は必要か
年間数万円の協賛や、物品の提供だけの場合、立派な契約書までは要らないこともあります。ただ、何も残さないのは避けたいところです。最低限、次の4点をメールや1枚の覚書に残しておきます。
- 金額(物品の場合は内容と数量)
- 期間
- こちらが行うこと
- ロゴや写真を使える範囲
物品の提供(現物協賛)の場合は、金額に換算するとどのくらいか、提供の時期、余った場合や不良品の扱いも決めておくと安心です。個人アスリートの注意点は「個人スポンサーの相場はいくら?」でも触れています。
契約書を交わすまでの流れ
- 提案書で条件をそろえる:金額と内容を、提案の段階で具体的にしておきます(スポンサー提案書の書き方)
- どちらのひな形を使うか決める:大きな会社では、先方の様式を使うことも多くあります
- 内容を読み合わせる:特に金額、中止、ロゴの範囲を口頭でも確認します
- 締結する:紙でも電子契約でもかまいません。紙の場合、印紙が必要かどうかは内容によるので確認します
- 掲出の前に締結を終える:看板やユニフォームの制作に入る前が目安です
募集から契約までの全体の時期は「スポンサー募集の方法」のスケジュール表を参考にしてください。
※この記事は一般的な考え方をまとめたもので、法律や税務の助言ではありません。金額が大きい契約や判断に迷う内容は、弁護士や税理士にご確認ください。
よくある質問
スポンサー契約書のひな形はそのまま使えますか?
個人アスリートでも契約書は必要ですか?
契約期間は何年にするのがよいですか?
協賛金は寄付と同じ扱いですか?
途中でスポンサーをやめたいと言われたらどうしますか?
契約のあとが、次の更新を決める
契約書は、結んで終わりではありません。書いたとおりに実行し、結果を報告することで、翌年の更新や紹介につながります。報告のしかたは「スポンサー契約の更新率を上げる「年間レポート」の作り方」で解説しています。
提案から契約の段取りまでを、チームの運営と並行して進めるのは簡単ではありません。日本アイケンのスポーツハブでは、クラブに代わってスポンサー営業を進めています。どこから手をつければよいか分からない段階でも、ご相談ください。